2021年06月20日
運歩の法(うんふのほう) 一歩目
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歩き…………脚を用い移動する行為。
またその動き、歩行、徒歩。
普段、我々が意識しなくても何気なく行えて
誰に教わらずとも自己流で如何様にも動け
且つそれを一日に何時間も続ける事が出
来てしまう。
本質的には非常に高度で多様性のある
極めようとすれば難易度の高い身体動作。
かつての日本人は、現在のような西洋式の歩き
(右腕と左脚・左腕と右脚を交互・前後に大き
く振る)とは違う
身体の同側(どうそく)を使う全く異なった
歩き方(右足が前に出るとき右手が前に出る
《振るとすれば!》基本的に腕は振らない歩行)
をしていました。
想像(イメージ)出来ますか?
その歩き方は、あまりにも普通に
日常の生活で使われていたので、誰も変わった
歩きだとか特別な歩きだという意識や疑問を
持つこともなく
当たり前すぎて呼び名すらありませんでした。
今では、様々な学者・研究者・実践家などが
明治維新時に国外から入ってきた西洋式の
歩き方・動作との区別をするため、
いつ頃からか、同側を協調して使う身体の動き
をナンバ(歩き)という呼び名で呼ばれるよう
になりました。
漢字で書くと、難場(困難・難儀な場面・状況
・場所、地形)が充てられ、体や心がしんどく
なる日常から来た呼び名だという由来の説や
(難波じゃないよ…笑!そこが発祥という怪
しい話もあるんだけど)
歌舞伎の六方(右手と右足、左手と左足、
同側が前に出る大見得をきった歩み方)の
所作から来ているという説。
農耕の場面などで、半身(ハンミ、上下同側
【腕・脚】を前に出す構え)の体勢が
日本古来の身体動作(労働の基本姿勢)の
日常化された形であり
商人が天秤棒を担ぐ姿などからは
半身の体勢が(同側を前にし協調させて使う)
農民に限らず広く日本人にとって最も自然で
基本的な習慣的動作であった事から来たとい
う説。
南蛮人が大手を振って歩いていた姿(南蛮人
なら非ナンバだと思うんだけど?)から
ナンバと呼ばれるようになったという根拠が
意味不明?の説までいろいろとあり
はっきりと断定・証明できるものはありませ
んが、それでも現代日本人の体の中には
古代から連綿と続くナンバの身体動作が
DNAに深く刻み込まれているのは確かな
様です。
その証拠に、だいぶ西洋化した(された)
現代日本人でも、畑を鍬(くわ)で耕す時には
右手・右足(同側)を前にして構えるし
薪割りや餅つきの杵を扱うときもそうします。
現代的で身近な動きの例だと
たくさん物を詰めた重いレジ袋やエコバックを
両手に提げて歩く時も、
腕を振らず、体幹を捻らず、上体をブレさせず
歩幅を拡げず運び移動しようとするでしょう?
これも基本、腕を振らない体幹を捻らない
負荷のかかった足(脚)腰への負担の少ない
接地の動き、機能的・効率的なエネルギー消費
の少ないナンバの動きです。
時を遡ると、歩き始めたばかりの幼児の動きは
まさにナンバそのもので、筋力はまだ未発達、
五頭身ぐらいで頭の重さの比重が高く、ユラユラ
と不安定なカラダを二本足で支え立って歩む時
足を肩幅に開き、両腕を上げ重心のバランスを
うまく取りながら、大人と比べれば殆ど無いに
等しいくらいの足腰の筋力と、少ない位置エネ
ルギーを効果的に使った体重移動。
同側を小刻みに前へと交互に押し出しながら
楽しそうに歩行を本能で制御し前進していく
のが見て取れるかと思います。
(下の動画を見てね!)
実は江戸時代まで
一般の庶民はナンバの動きで超絶的にうまく
歩く事は出来ても、現代人の様に早く走ると
いう事は出来ませんでした。
当時、走ることができたのは特別な技術を持
った限られた人達のみ、職業で言うところの
表の稼業では飛脚かごく一部の武術継承者
裏稼業では忍者くらいのもので
緊急事態に急いで移動する際
一般庶民は阿波踊りか幼児の歩きと同じ様に
両腕を上げ、前へ投げ出し泳ぐ様な格好で
出来ないながらも何とか走ろうとして
火事から必死に逃げ惑っている
当時の様子を表す絵が今も残っています。
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歩き始めたばかりの幼児のナンバの動きが
よくわかるyoutube動画を見つけたので
参考までに!
Posted by 玉城 覚 at 19:43│Comments(0)
│ウォーキング